夫のマシュウです。
秋の深まりとともに気温も低くなり、気持ち的にも寂寥感を感じるこの頃です。
先の台風19号の爪跡が大き過ぎ、他人事とは思えないくらいショックが大きかったせいもあるでしょう。
自然の猛威の前に人間のなすすべのなさを思い知らされた出来事でした。
そんな時、札幌交響楽団の第623回定期演奏会でJ.S.バッハの「ヨハネ受難曲」が演奏されました。
札響がバッハを演奏する機会が多くなったのは、マックス・ポンマーさんが首席指揮者として在任してからのこと。
今回はその集大成として、この大曲の演奏が実現しました。
紅葉の進む中島公園
朝からあいにくの雨・・・コンサートホールキタラに向かいます。
中島公園の貸ボートも店じまいして訪れる人もなく、ひっそりとした佇まい・・・
深みを増した紅葉も終わりに近づいたのか、落ち葉が歩道を埋めていました。
今回のテーマは
首席指揮者マティアス・バーメルトさんが、各定期演奏会の指揮者に投げかけた「お題」が「作曲家が作曲家に出あうとき・・・何を感じ、何を与えたのだろう?」ですが、
ポンマーさんの「回答」は、バッハの「ヨハネ受難曲」で応えました。
そのココロは、「引用(Quotation)」です。
「ヨハネ受難曲」で、バッハは既存の聖歌(コラール)を「引用」して、
巧みな和声で編曲して取り入れているということ。
首席指揮者時代のポンマーさんと札響は、これまでの定期演奏会で「管弦楽組曲」や
「クリスマス・オラトリオ」などの大曲を演奏してきました。
「ヨハネ受難曲」は、ポンマーさんが札響在任中から、目標として楽団員に提示してきた曲だといいます。
今は、首席指揮者を退いたポンマーさんと札響との集大成ということで、
日本を代表する5名の歌手の方々の他、バッハの活躍した時代の古楽器の響きも味わえる、
なんとも贅沢な演奏会となりました♪
初めて目にする、脚で挟んで演奏するヴィオラ・ダ・ガンバ(脚のヴィオラ)や、
独特の甘い響きが特徴のヴィオラ・ダモーレ(愛のヴィオラ)に加え、
リュートやオルガンも登場します♪
久しぶりに私たちの前に立つポンマーさんの指揮ぶりが楽しみ!
バッハ/ヨハネ受難曲
音楽の父として知られるバッハは、キリスト教のルター派の宗教音楽を数多く作曲。
その宗教音楽の頂点に新約聖書の福音書(ルター訳のドイツ語版)で伝えられるイエスの受難の物語に曲をつけたのが「受難曲」です。
この受難曲には、今回演奏される「ヨハネ受難曲」ほかに「マタイ受難曲」もあります。
先に、バッハ39歳の1724年に作曲された「ヨハネ受難曲」は
「ヨハネによる福音書」に基づいており、その3年後の1727年に作曲された
「マタイ受難曲」はマタイによる福音書の基づいているというわけです。
したがって、福音書で語られる物語の流れで、曲も進みます。
全体は二部構成!
第一部は、第1曲が冒頭の合唱から始まります。
続いて
「イエスの捕縛」(第2曲~第7曲)イエスが捕縛される場面から、
殺されることが予言される場面まで!
「ペテロの否認」(第8曲~第14曲)イエスは大祭司の尋問を受けています。
ペテロがイエスの弟子ではないと否認しますが、イエスの言葉を思いだして泣きます。
第二部は第15曲「コラール」で始まります。
「ピラトの尋問」(第16曲~第20曲)総督ピラトがイエスを尋問する場面が続きます。
「判決」(第21曲~第24曲)罪を見つけられないピラトは民衆の「十字架につけろ」の声に屈し、イエス自らに十字架を背負わせ、ゴルゴダの丘に向かいます。
「はりつけ」(第25曲~第29曲)
「イエスの死」(第29曲~第37曲)イエスは全てが成し遂げられたことを知り、
「果たされました」と言葉を発し、最後の場面を迎えます。
「埋葬」(第38曲~第40曲)イエスの遺体は十字架から降ろされ、
弟子たちによって墓に埋められて物語の幕は閉じます。
最後の合唱は、力強い演奏で幕を閉じることから、この世の中でイエスの教えを信じ、
力強く生きるという勇気を与えてくれる終曲!
私自身、聖書を読んだことがないので、書かれている意味合いを理解することはできませんが、ヨハネ受難曲はイエスの生涯と十字架の意味について語った伝道叙事詩として
キリスト教の信者ばかりでなく、多くの人々に生きる喜びを感じさせる大曲です。
演奏時間は、第一部が約35分、第二部が75分です。
感想
今回のこの大曲、札響初演となるそうです。
ソリストの情感あふれる歌声と、札響合唱団の迫力あるホールいっぱいに広がる
音圧で圧倒されました。
歌詞はドイツ語ですから、そのままでは内容が理解できません。
歌い手たちは歌詞の内容を理解したうえで歌っているのでしょうけど、
私たち聴衆も、歌詞カードを開き、和訳とにらめっこで、曲を聴くことになります(^^)/
途中休憩をはさみながらの文字どおりの大曲!
ポンマーさんの統制のとれた指揮のもと、ルター派の宗教音楽家でもあったバッハのキリスト精神世界に少しだけ触れられた感じがしました。
和訳の歌詞を追いながら内容を理解して、厳かで重厚な合唱の響きを耳にすると、
自然の中で生かされている人間の小ささと、
超越した存在に救われたい気持ちが湧いて感動しました。
なんとなく心が洗われたような気持で帰途につきました♪