「憧憬(しょうけい)」がテーマ!「あこがれ」がいい仕事を生む!

夫のマシュウです。

人は、自分が興味を持つことに対して、もっと上手になりたい、もっと上を目指したいなど、向上心を抱くとき、その道の先輩とか先達に「あこがれ」を抱くものですね。

スポーツ界では、スター選手にあこがれて始め、そしていつか、

そのあこがれの選手を超えるという、出世物語も聞きます。

クラシックの世界でも、有名な作曲家であれ、演奏家であれ、

その成功の礎には「あこがれ」の存在があったという話をよく聞きます。

今回のテーマは「憧憬」

札響の首席指揮者マティアス・バーメルトさんが、各定期演奏会で指揮者に課した「お題」が「作曲家が作曲家に出会うとき、何を感じ、何を与えたのだろう?」でした。

6月22日の「第620回定期演奏会」の指揮者ユベール・スダーンが出した「回答」は「憧憬(しょうけい)」でした。

「憧憬」と書いて「あこがれ」です。

指揮者のユベール・スダーンは、チャイコフスキーのモーツァルトへの憧憬(もしかしたら愛)が書かせた「モーツァルティアーナ」を選びました。

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番には、独奏に竹澤恭子さんを迎えました。

今回の演奏曲目

今回のプログラムは3曲です。

チャイコフスキー/組曲第4番「モーツァルティアーナ」

この曲は、チャイコフスキーが音楽の神と仰いでいたモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」の初演100周年を記念して書かれた作品だということです。

チャイコフスキーの第4番目の組曲ですが、モーツァルトのピアノ小品4曲に管弦楽曲としての編曲をした作品だということもあって、チャイコフスキー自身が「モーツァルティアーナ」の標題を付けたものです。

全体は4曲からなり、演奏時間約24分の曲です。

札響での演奏歴は、これが2回目だということです。

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲第2番

プロコフィエフは作曲家でもあり、優れたピアニストでもありました。

1917年のロシア革命をきっかけに、日本を経由してアメリカに亡命!

ですがこの協奏曲を作曲した1935年ころは、望郷の思いが強く、祖国ロシアへの郷愁のこもった作風となっているとのこと。

これも「憧憬」のひとつの表現でしょうか。

当時、フランス人バイオリニストと一緒にヨーロッパ各地の演奏旅行していた合間を縫ってフランスのパリやロシアなどで曲つくりをしており、ロシア民謡風の旋律やスペインの民族舞曲風にカスタネットを用いたりと多彩な民族色が聴きどころ。

全体は3楽章構成で、演奏時間は約26分の曲です。

第1楽章 冬のロシアをイメージさせる哀愁に満ちた旋律

第2楽章 広いロシアの雪景色をイメージさせる叙情性

第3楽章 スペイン舞踏風のエネルギーに満ちた旋律が印象的

サン・サーンス/交響曲第3番「オルガン付き」

フランス人のサン・サーンスは、モーツァルトとも並び称される神童で

3歳の頃にはもう作曲も手掛けたといわれています。

ピアニストでもありオルガニストでもあるサン・サーンスの5曲ある交響曲(番号なしが2曲)のうちの最後の交響曲で、初演後に自身が「与えなければならない全てを与えた。再びそれを行うことはないだろう」と、作品中のパイプオルガンの用法などその持てる全ての技法を注ぎ込んだ作品とされています。

指揮者のユベール・スダーンさんはフランス音楽の伝統を継承することに誇りを持っている方だということですので、この曲は「憧憬」なのかもしれません。

また、サン・サーンスがオルガニストをしていたときの演奏を聴いた、

フランツ・リストから最高の賛辞を贈られたということです。

そして、この交響曲第3番には主題が曲全体を通してどんどん変化して展開していくというリストの主題変容の理論を用いていることから、リストへのオマージュだったのではないかということが、この曲の初演後に亡くなったリストにこの曲を捧げたことからもうかがえます。

サン・サーンスの「憧憬」にリストがいたのかもしれません。

全体は、大きく2楽章。前半と後半に分かれて、演奏時間は約35分。

最終楽章のパイプオルガンの威風堂々とした響きと、ピアノの響きとが相まっていく様はまさに圧巻です。

演奏会の感想

チャイコフスキーの組曲は、札響の澄んだ厳かな響きが

モーツァルトへのオマージュのようにも聴こえてきました。

プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲は、大ベテランの竹澤恭子さんのストラディヴァリウスから美しい旋律が会場いっぱいに広がり、心地よい響きに浸ることができました。

大きな拍手に応えて、アンコールはバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番からガヴォットとロンド」

サン・サーンスの交響曲はキタラに大きなパイプオルガンがあるためか、

演奏される機会の多い曲です。

ホールを覆いつくすような、パイプオルガンの厳かな響きと、

オーケストラの迫力ある演奏とが相まって、感動と神聖な気持ちでいっぱいになりました。

札響の「今年一番のデキ」ではなかったでしょうか。素晴らしかったです!(^^♪

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